長岡 参
様々な限界集落、山形の山伏、沖縄久高島の秘祭、徳島の林業、島根の有機農業、山梨県の奥地にある雨乞いの儀式……一見無関係に見えるものたちが、「産土」という言葉で結ばれるとき、現代の私たちが忘れてしまったものが眼前に浮かび上がってくる。日本とはどういう国なのかを知るためのドキュメンタリー。
震災直後の2012年、映像作家・長岡参をリーダーに、さまざまな出身国の外国人映像作家たちで構成されるキャラバン隊が、「森と人の暮らし」というテーマで日本の農山村、漁村を駆け回わり、山形の山伏やマタギ、島根県の有機農業、徳島の林業、長野・山梨の限界集落、そして沖縄の神秘的な離島を取材。
多岐に渡る内容をどうやってこれらをまとめようかと逡巡を重ねていたとき、ふと長岡が思いついたのが「産土」という言葉でした。
「産土」とは、土地そのもののことであったり、土地の神のことを指す言葉です。人が産まれてから死んでいくまで、その人のことを守り続けると信じられてきたといいます。
外国人作家らとともに旅していくことで、自然と何かに手を合わせたり、頭を下げたりする、日本人の行為や習慣こそが、自分たちの特徴であり、よりどころではないかと思うようになりました。 乱開発や環境破壊などを繰り返す一方で、一本の草木のために祈る文化がある。当たり前なこと過ぎて、ことさら特筆すべきものではなかったかもしれませんが、そういうものが失われつつある現在、少しでも形に残したいと思ったのです。 そして完成した映画『産土』は、国内外の多くの場所で上映され、映画を見た人自らが行動を起こすきっかけとして、完成から10年が経った今日でも、多くの共感が寄せられています。
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