神山アローン

長岡 参

移住者が次々集う町として一躍全国的に有名になった徳島県神山町にあって、老美容師のさっちゃんはある孤独を抱えていた。この映画は、駆け出し映像作家・長岡参がさっちゃんと神山の変化とを見守ってきた、6年間の記録である。

これは6年間神山で暮らし、その幾多の現実と変遷を見守ってきた小さな記録である。

今や地方創生のシンボル的存在として、全国にその名が知れ渡っている神山町。2010年の夏、小さなドキュメンタリー映画を作ろうと思い東京を経った僕(長岡参)は、神山の散髪屋の“湊のさっちゃん”に出会った。地域の芝居小屋での看板女優であった彼女は、稼業の散髪屋だけでなく水商売、着付け屋、石屋等数多くの商売をし数億円ものお金を稼いできたという、神山の「ゴッドマザー」のような存在である。様々な歴史や伝承とともに、自分の人生について闊達に語ってくれた彼女は、今まで誰にも話してはこなかったという“秘密”を僕に語りはじめた。ひとりの女性と、それにまつわる人々、そして山奥の環境に生きるということに上っ面だけではない「現実」がそこにはあった。これは時代が大きく変わろうとしていく中で、さっちゃんに寄り添うように6年間暮らし、その変遷を「僕」が見守ってきた、小さな記録である。

BACK

OTHER WORKS

長岡 参