長岡 参
メガタウン池袋の東西に今も残る3つの「まつり」。人々は、少子高齢化、コロナ禍などの時の流れに直面しながら、なんとか「音」を鳴り続けさせるために奮闘するのだった。
2020年から続く収束の見えないコロナ禍にあって、日本各地のお祭りや地域行事などの祭礼は次々中止を余儀なくされていました。本作の舞台となる池袋周辺には、全国的にはあまり知られていないものの連綿と継承されてきた幾つかの祭礼があります。その中の「長崎獅子舞」「冨士元囃子」「雑司が谷御会式」を継承する三つの団体に、2021年に半年近くかけて密着取材を行い、オムニバス形式のドキュメンタリー映画『音、鳴りやまぬ。』として完成させました。
手のつけられない悪童だった少年時代の記憶に対する贖罪のように、地域社会への責任を果たそうとする男と、その男の振る纏(まとい)に憧れる小学生。
富士山信仰を今に残す富士塚を守る人々が奏でる囃子と、彼らが直面する後継者問題。
疫病退散祈願のために始まった獅子舞を何とか残そうとする男と、彼が育てた三人の若者たちの決意。
蔓延するコロナ禍の渦中で、人々は祭りを行えぬことに戸惑い、怒り、嘆いていた。
それでも、もがいていた人々がいる。
祭礼を信じ、守ろうとしていた人々がいる。
誰も経験したことのない時代の中、それでも音は鳴り続けるのであった…。
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長岡 参